7月19日(日)15:00-18:00
慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎523B室
【研究発表】
(1) 濱上桂菜(大阪大学大学院)「現代フランス語における動詞起源の名詞について – 動詞の構文とメトニミーの関係から」
(2) 平塚 徹(京都産業大学)「道具として解釈される場所前置詞句」
司会 六鹿豊 (白百合女子大学)
発表要旨(1)
濱上桂菜(大阪大学大学院)「現代フランス語における動詞起源の名詞について-動詞の構文と部分冠詞によるメトニミー現象」
本発表では、認知言語学の観点から、フランス語における動詞の名詞化表現の意味拡張について分析し、さらに、それが部分冠詞と共に使用されるさいのメカニズムについて考察する。まず、動詞の名詞化表現(動詞起源の名詞)の意味には、しばしば”action de…” のほかに”resultat de cette action” があるとされる。たとえば、”imagi-nation” は、「想像すること」のほかに「想像物」を意味することもある。本研究では、起源となっている動詞のアクションチェーン上でのメトニミー現象としてこの現象を捉え、その拡張パターンを明らかにしていく。つぎに、動詞起源の名詞が部分冠詞を伴うケースに着目し、(たとえば、Il a de l’imagination「彼には想像力がある」)、その意味のさらなる拡張について考察する。特に、このときの部分冠詞の役割が、いわゆる物質名詞などと共に使われるケース(de l’eau など)における役割とは異なると思われることに注目したい。
(2)平塚 徹(京都産業大学)
「道具として解釈される場所前置詞句」
”Ils ont transporté le blessé sur un brancard.” のような文における前置詞句は、本来、場所を表すものであるが、運搬の道具を表していると解釈される。このような前置詞句は場所と道具の中間領域に位置するという考え方もある。しかし、この前置詞句*自体*は、場所だけを表しており、道具を表してはいない。道具を表していると解釈されるのは、その前置詞句が表している内容を動詞の意味や世界についての知識と合わせて、(たとえ無意識的にであれ)推論した結果である。その意味では、上記の例文は、日本語の「彼らは怪我人を担架*で*運んだ」よりも、「彼らは怪我人を担架*に乗せて*運んだ」と比べる方が適切である。運搬道具が運搬事象の中で有する関係は、場所と道具が複合したものである。しかし、その複合的関係を言語化するには、場所と道具の両側面のうち、一方を明示的に標示し、他方を推論に任せるのである。