256回例会

6月27日(土)15:00-18:00 
   慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525A室
 
【研究発表】
  (1) 治山純子(東京大学大学院)
   「感情表現の身体性 「目」に関するメタファー表現を通して」
  (1) 中田俊介(東京外国語大学大学院)
   「フランス語アクセントの音韻論的構造」
 
   司会 藤田知子 (神田外語学院)


256回例会要旨
治山純子(東京大学大学院)
「感情表現の身体性ー視覚・触覚に関するメタファー表現を通して」
 本発表は、事象の把握と感情の理解における身体性基盤を明確にすることを目的とする。まず、外界の事象の把握に人間の身体がいかに投影されているかを、他の言語との比較と共に概観する。そして、身体部位を表す語の中で特に”oeil, yeux” と ”main(s)” を扱い、両語の多義性と各義の熟語表現をメタファー、メトニミー、イメージ・スキーマ、プロミネンス・モデル等認知意味論の道具立てを用いて分類・分析する。ところで、目も耳も通常ペアとして機能する身体部位であるが、単複の違いにより価値評価に差異が現れることが多い。その要因をセカンダリー・メタファーという概念を導入して、議論する。また、視覚・触覚と感情との相関性が顕著なメタファー表現を、熟語・慣例的なメタファー・文学作品における創造的なメタファーのレベルで分析し、身体性に基づく感情の理解について考察する。
中田俊介(東京外国語大学大学院)
「フランス語イントネーションの音韻論的構造」
 イントネーションを文レベルの高さの変化と捉えるならば、フランス語においてそれは、句頭あるいは句末という特定の位置において起こっていることが観察される。De lattre(1938) からRossi(1985), Jun & Fougeron(2000) に至るまで、句末位置での高さ変化には時間的変化(音節の伸長)が伴うことが伝統的に指摘されてきた。Jun &Fougeron(2000)はさらに、句頭での高さ変化は(いわゆるaccent d’insistanceを除き)時間的変化を伴わないことを示している。今回の発表では、句の内部にある語末位置で観察される高さの変化について報告する。それは時間的変化を伴わないという点で、従来記述されてきた句末での高さ変化とも異なるものであり、高さ変化と時間的変化の同期のパターン、あるいはリズムグループの長さについて、より柔軟な記述を可能にする要素であると考えられる。
Delattre, P.(1938)”L’accent final en français”, French Review 12.Rossi, M.(1985) “L’intonation et l’organisation de l’énonce”, Phonetica 42.Jun, S.-A. & Fougeron, C. (2000) “A phononogical model of French intonation”, A. Botinis (ed.) Intonation.

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