5月22日(金) 15:00-18:00
東京大学(駒場キャンパス)18号館4階コラボレーションルーム1
☆同時期に中央大学で開催される日本フランス語フランス文学会春季大会と会場がちがいますのでご注意ください。
【研究発表】
東郷雄二 (京都大学)「談話管理と時制 ─ 単純過去と半過去をめぐって」
司会:春木仁孝(大阪大学)
第255例会要旨
東郷(2007)では2つのzoneからなるフランス語時制の全体像を提案したが、この図式には単純過去(と前過去)が抜けている。それはなぜかということが今回の発表の主なテーマとなる。本発表では、時制は談話的現象であり、時間軸上の出来事の分布に還元されるものではないという立場に立って、談話管理と伝達される談話情報の質の観点から単純過去の特徴を論じる。金水(2001)の「出来事的テンス」と「情報的テンス」、定延(2004)の「体験」と「知識」という概念を援用して、単純過去は知識としての情報の全体性 (globalite’)を前提とする時制であることを示す。
同時にVogeleer (1994)が提案した半過去の「認識型」(epistemique)と「知覚型」(perceptuel)の区別を批判的に再検討し、半過去の特徴とされる過去への視点移動(事態の内的把握)を考察する。そこから導かれる結論は、i)単純過去に視点を置くことはできない ii) discoursの半過去 (東郷2007)とVogeleer (1994)の認識的半過去(包括型)では過去への視点移動は起きない というものである。また半過去のうち、Vogeleer (1994)が認識的半過去(包括型)と呼ぶものを除いて、半過去は知識または体験としての情報の部分性(partialite’)によって特徴づけられる時制であることを示す。
【参考文献】
東郷雄二(2007)「Je t’attendais.型半過去再考」『フランス語学研究』41
金水敏(2001)「テンスと情報」科学研究費報告書
定延利之(2004)「ムードのタの過去性」『国際文化学研究』21
Vogeller, S. (1994) “Le point de vue et les valeurs des temps verbaux”, Trav.de Ling. 29